治療薬として白内障進行予防の点眼がありますが、これを使用しても治るわけではなく、一度生じた濁りは改善しないので、白内障が進行してしまったら、有効な治療は手術しかありません。目の中の水晶体というレンズが濁って光の通りをさえぎるわけですから、この濁りを取り除けば光の通りが回復します。しかし、取り除いただけではピンボケになってしまいますので、合成樹脂製の眼内レンズ(いわゆる人工水晶体)を目の中に移植します。
手術の内容をもう少し具体的に説明しますと、水晶体は水晶体嚢と呼ばれる透明な袋に包まれており、その中身が濁っています。そこで、この透明な袋の前の方に丸い穴をあけて、中身を超音波で砕きながら吸引して取り除きます。そうすると透明な袋が残りますので、その中に眼内レンズを挿入します。
万が一、手術の状況によって眼内レンズを移植できなかった場合には、コンタクトレンズなどの使用を考慮します。
なるべく丁寧な手術を心がけており、手術時間は平均15 分以内ですが、手術中に合併症が生じると、1時間以上の時間を要することも(まれですが)あり得ます。
【眼内レンズの度数と種類】
眼内レンズの度数は、眼球の大きさ(直径)と角膜(黒目)の形から計算し、ご希望によって度数を選択します。この度数の狙い方の大まかな指針を記しておきます。
【遠くに合わせる場合】
裸眼の状態で遠く(2~3m以上離れた距離)が見やすいようにします。
読書時には近用眼鏡(老眼鏡)が必要になります。
もともと、裸眼で遠くがよく見えていた方に向いています。
【近くに合わせる場合】
裸眼で読書距離の30~40cmが見やすいように度数を設定します。
遠くを見るためにはメガネが必要です。
近視でメガネに慣れており、手元を見る時には、メガネを外して見る習慣がある方に適しています。
【中間に合わせる場合】
1m前後に合わせると裸眼で遠くも近くもある程度は見えます。
あまり細かい字を読まない方は、これで満足される場合もありますが、遠近ともにはっきりと見るためにはメガネが必要です。
大まかには以上の3通りですが、御要望に合わせてより細かい選択も可能です。
適切なメガネを用いれば、遠くも近くもピントは合いますので、あくまでも「裸眼で」ど
のようになりたいか、ということが選択の基準です。
長年コンタクトレンズを使い慣れてきた方など、それぞれの方の状況に応じ、反対眼の状態も考慮しながら適切な度数を提案致しますが、最終的には御本人に決めて頂きます。
度数決定の参考とするために作成したアンケート用紙を事前にお渡しています。
必ず、事前に御記入の上、術前検査の日にご提出下さい。